真空対応ステージガイダンス
はじめに
「真空対応ステージ」は、真空域で耐えうる材料や部材を使用し、高い位置決め精度・高剛性を維持した汎用位置決めステージです。ステージの本体にはアルミニウム素材、案内部にはステンレス、メネジ、ウォームホイール部にはリン青銅などの金属や、真空対応の絶縁材・潤滑材などを使用しています。これらの材料の選択や製造工程には、これまで弊社が放射光施設、半導体露光、宇宙関連の装置開発で培ってきたノウハウが結集されています。また、検査や包装も十分に管理された環境のもとで行われています。 ここに記載されているステージ以外でもエンコーダの取り付けや、超高真空対応製品などのご要望がございましたら、弊社営業部までお問い合わせ下さい。 |
到達圧力、残留ガス、放出ガス速度の計測
テスト用の真空容器にステージを挿入した場合と、ステージなし(バックグラウンド)の場合で、到達圧力の時間変化、残留ガス分析、放出ガス速度の計測結果を示します。 |
■ 計測条件 |
■ 真空ゲージ B-A 形電離真空計 (アネルバ社製、ミニチュアゲージMG-2F, コントローラMIG-430) 四重極型質量分析計(アネルバ社製、型式:M-100QA-M) 計測条件: フィラメント電流2.5mA, 2次電子増倍管印加電圧1400V |
1.圧力の時間変化
図1 真空到達度(試験ステージありとバックグランド) (図をクリックで拡大) |
2.四重極型質量分析計を使用した残留ガス測定
四重極型質量分析計では、気体分子の質量m(amu)(amuはatom mass unitの略)を電荷量z(整数)で割ったものを観測します。 ステージを真空容器に入れた場合には、水素、水、炭化物、窒化物などに加えて、潤滑剤が由来と思われる炭化水素ガスや炭化フッ素ガスも観測されます。これらのガスは、常温では圧力にほとんど寄与しませんが、温度を上げると蒸発量が多くなり影響を与えます。超高真空下での使用には、炭化水素や炭化フッ化ガス放出の少ない固体潤滑を採用し、ベーキング対応の材質に変更を推奨します。 |
図2 残留ガス分析結果 試験ステージあり(ベーキングなし)とバックグラウンド(ベーキング150℃10時間) |
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試験ステージ(図をクリックで拡大) | バックグラウンド(図をクリックで拡大) |
3.放出ガス速度(オリフィス法)
Q=C{(P1-P2)-ground}(Pa・m3/sec) |
真空内で使用する際の注意点
●容器の排気について
真空ポンプの選定・取り付けには、真空容器の容積、内部装置からのガス放出量、排気系のコンダクタンスを考慮して下さい。また包装からステージを取り出した後は、長時間大気に曝すことは避け、早めに真空下に設置して下さい |
●モーターの発熱によるベーキング効果
真空内では、大気中と異なり対流による熱伝導はほとんどありません。このため、主にモーターから発生した熱により、以下のような現象が起こります。 |
左のグラフは、真空容器の中に真空対応ステージに使用しているモーターを挿入し、圧力変化を調べた結果で、モーターを励磁するとある時間を過ぎた時点で圧力が飽和します。そのあとモーターを回転させると、回転中は圧力が急激に上昇しますが、しばらくするとすぐに元の状態に戻ります。
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図3 モーターの励磁・回転と圧力上昇 (図をクリックで拡大) |
●圧力を低く保つには…
1.使用する前に慣らし運転して、ガスを放出しておく。 |
●より高精度を追求するには…
1. モーターの温度を逃がすような工夫を施す。もしくは、モーターとステージの間を断熱する。 |